『 空洞へ 』
よく、命について考える。
人間も、犬も、牛も、鳥も、魚も、似たようなものだと思う。この星の上の小さな点、すぐに消えてしまうような、紛れてしまうような些細なものだ。
もし、空洞へ放り込まれたとして、
自分とは別の命がもうひとつあれば、わたしは暗闇の中でもすこやかに生きていける気がしている。
それがヒトでなくても、温度を感じたり形に触れるだけでいい。
言葉などなくても、命がふたつあれば、孤独を内側で抱えながら暗闇の中でしぶとく生き残れる。
心は、それくらい単純な仕組みで出来ているのだと思う。
わたしの絵は、わたしの皮膚の内側にある大きな暗い空洞に、小さな命が放り込まれただけの世界だ。
大きな暗い空洞は、常に私の側にあり、そこが何かで満ちたり、塞がることはなかった。
ヒトも動物も植物も、みんなそれぞれの空洞を持っている。
わたしのそれとは違う形をしているかもしれないが、誰にでもきっとある。
何の役にも立たない、いっそ無い方が楽になれるそれを抱えて生きている。
たぶん、その役立たずの空洞の中に、わたしたちの心は詰まっている。
空洞の中を彷徨う、ひとつの魂を想像する。
社会や、経済や、歴史がまだ無かった日から今まで、わたしたちが抱え続けてきたもの。
言葉を知らなかったころから、知っていたこと。
この世界に溢れる、取るに足らないちっぽけな命たちのこと、それらの心について。
わたしは形に残しておきたいと願っている。
生まれた時から付き纏う様々な固定概念の、その全てを失って真っ白になっても、
この星の上に真っ直ぐ立っていられるように。
My paintings are about personal space that exists inside of me since when I was young.
I consider each person has their own history. And though it is not a movie, it includes drama, trauma, sadness, and loneliness.
In my case, the lonely childhood I spent in Thailand and Singapore is my dark, empty space. I think everyone has their own nameless dark like I have. Maybe it has a different shape to mine, but I think you have one too.
I draw imaginary forests to fill in the darkness, making it habitable, rather than covering it up and ignoring it. I want my paintings to embrace the darkness which surges through people’s fragile bodies, helping them to coexist in harmony.
My darkness cannot solve global issues. But I keep drawing this theme because I believe we can hold someone’s hand easily if we can realize that every person has their own darkness.
I feel my paintings are my shelter, but also it can be a gentle weapon that I can use for surviving in this complicated world.
Minami Kitabayashi